天王祭り

じめじめとした梅雨が明ける頃、日本全国の町や村で天王祭りが行われます。
この天王祭りの内で、最も有名なものが京都の八坂神社と愛知の津島神社の祭典で、山鉾や山車、まきわら船など夏の風物詩となっています。またこの地方では、長久手市前熊や瀬戸市品野の山車が有名です。
これらの社をはじめ、全国の天王社(須左之男社・津島社)にお祀りしてある神様が須左之男命(スサノオノミコト)という神様で、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治した神話のヒーローです。
八岐大蛇は、人々の生活をおびやかす諸々の禍事(マガゴト)のたとえであり人間の罪や穢れ・悲しみ・生と死・天災地変などを指します。この禍事を一身に背負い、われわれ人間を良い方向へお導き下さる神様が須左之男命様なのです。
昔の人々の生活は現代のように衛生的でなく、医薬などもないために疫病が猛威をふるい、数多くの人が苦しみ死んでゆきました。
これらの災厄は、非業の死を遂げた人の霊魂によるものと信じられ、霊魂を鎮める御霊会(ごりょうえ)と呼ばれる神事が、平安時代から営まれるようになりました。貞観十八年(西暦876年)京都で疫病が大流行したので占うと牛頭天王(ごずてんのう)の祟りであることが分かった。

【京都八坂神社】

このため、常住寺の僧円如が現在の八坂神社の社地に牛頭天王を祀り、御霊会を盛んに行いました。やがて牛頭天王と須左之男命の神話が習合して、牛頭天王は神道では須左之男命となり、疫病を支配する神として信仰されるようになりました。
牛頭天王は頭が牛に似ているためにこう呼ばれ、祇園精舎の守護神であったことから、八坂神社を古くは祇園社と呼びました。

前熊お天王祭りについて

長久手市前熊地区では、夏の夕暮れ田園風景の中で、お天王祭りが行われます。400年近い歴史があり前熊地区に伝わる津島神社の祭礼で氏神に奉納します。日が沈むころ津島神社の灯明を上げ、祭りが始まります。前熊の山車(市指定有形民俗文化財)の提灯に火が灯り、山太鼓の奉納がされ、打ち囃し太鼓も、南方面から山車のある多度神社に向かいます。大太鼓や小ばちを竹竿で吊り演奏しながら歩く道中には、地元の子ども達などが描いた角行灯がならび、参道まで続きます。多度神社から山車を地元のみなさんで引き出し、山太鼓や打ち囃し太鼓にも力が入ります。古くから前熊に伝わる素朴なお天王祭り。今年も伝統と絆をつなげていきます。